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人工知能の過去と未来についてまとめた本。学生時代にニューラルネットワークなどを触っており、断片的な知識はそこそこあるものの、分野全体の概観については理解が浅かったため、一つ勉強してみようと思って読んだ。非常に面白かった。前半部ではこれまでの人工知能研究の歴史をまとめ、後半部では人工知能の今後の展望について、レイ・カーツワイル、ジャロン・ラニアー、ビル・ジョイの見解を紹介している。
著者のサム・ウィリアムスはフリーのサイエンスライターで、人工知能の専門家ではないが、それゆえに特定の立場に与することなく、客観的に人工知能という分野を描いている。バランスの取れた冷静な記述をしており、人工知能に詳しくない人が最初に読む1冊に良さそう。逆に、既にある程度知識がある人には、知っていることばかりで退屈かもしれない。
個人的な備忘録をかねて、人工知能の歴史を簡単にメモっておく。
1946年にENIAC、1950年にEDVACが完成。コンピュータを使って人工知能を実現しようという人たちが取り組みを始める(人工的な知性というアイディアそれ自体はもっと前からあった)。1956年にヒューリスティック理論、1957年にパーセプトロンが提案される。生成文法やLISPの登場も同時期であり、50年代後半は人工知能研究が飛躍的発展を遂げた時期であった。この時期、研究者たちは楽天的であり、このまま研究が進展すればやがて人間と同じような知性を人工的に作り出せると考える人が多かった。
60年代に入ると人工知能研究は停滞する。1960年、J.R.ルーカスが人工知能にはゲーデルの不完全定理の指摘する論理的矛盾を克服することはできないと指摘する。1969年、ミンスキーらがパーセプトロンの理論的限界(線形分離しかできないってやつ。大学院の尾内先生の講義で習ったのを思い出すな)を指摘する。同時期にフレーム問題や記号接地問題についても指摘があり、人工知能の限界が意識されるようになる。これらの指摘を受けて国防総省が人工知能研究への投資を絞ったこともあり、人工知能の研究は下火になる。
80年代になると、人工知能の分野にようやく新しい試みが現れるようになる。エキスパートマシンの研究が進展し、ダグ・レナートがCycプロジェクトを開始する。人工知能の商用利用も始まり、人工知能ソフトウェアを開発するシンボリック社が年間100万ドルの売り上げをあげるようになる。また、80年代になると、多くの研究者はコンピュータの上に人間のような知性を作ろうという考え(いわゆる「強いAI」)を捨て、限定的な学習能力や推論能力をより良いものにしていこうというアプローチ(「弱いAI」)を取るようになる。
90年代以降も、概ね80年代の流れを受け継ぎ、「弱いAIを有用に使いましょう」というのが人工知能研究の主流である。90年代の主たる業績には、ブルックスらの強化学習が挙げられる。1997年には、ディープブルーがチェスの世界王者を破ったことが話題になる。また、ロボット犬アイボが発売されるなど、人工知能研究の成果がより多様な形で応用されるようになる。

