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2006年5月19日
[読書]日立 -技術王国再建への決断- このエントリーを含むはてなブックマーク

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 日立製作所はこの春から僕が働く会社である。自分の会社について客観的な視点から書いたものを読んでみようと、何冊もある日立本の中から最近出たものを選んで読んでみた。

 まずこの本で良いのが序文の一節である。日立製作所の業績は目下厳しく、連結ベースで9兆円を超える売り上げがありながら、純利益はたったの300億円そこそこであり、大手電機の中でも負け組と言われることが多いのだが、このような状況に至った流れを的確に説明しており感心した。少々長いが引用する。

 日立製作所グループは日本的な企業システムをエンジンに発展した典型的な企業集団である。

 電力会社、鉄道会社、NTTと太いパイプを築き、特定顧客との長期に渡る安定した取引が成長の土台になった。新規参入分野では規模の力を背景に、トップシェアは取れなくても一定のシェアを確保。需要が伸び続ける右肩上がりの経済に支えられ、充電、家電、コンピュータ、部品、材料などエレクトロニクス関連のあらゆる分野を持つフルライン型の事業構造を確立、日立製作所を頂点に膨大な数の子会社、孫会社群がピラミッド型に広がる大企業集団を作り上げた。厳格な予算制度に象徴される日本企業の中でも群を抜く強固な管理主義で組織を統制、拡大路線をひた走った。連結対象会社数は千社を超え、従業員数30万5千人という現在の日立グループの姿は、恵まれた経済環境の中で「日本型経営」が十二分に回転した結果である。

 しかし、経済のグローバル化が進み本格的な競争社会に突入後、安定した経営環境の中で機能してきた日立の成長モデルは崩壊し、成長を支えた様々なシステムは逆に、一転して企業の競争力を低下させる障害物と化した。

 長らく電力会社など特定顧客へ依存してきたことで新規顧客の開拓力、マーケティング力は弱まり、激しい国際競争を戦う上で大きなハンディを負うことになった。赤字の事業を黒字の事業で補い企業全体として一定の収益を保ってきたフルライン型構造は、ある分野に突出した競争力を持つ専業メーカーに切り崩され、成長力を弱めるだけの時代遅れの仕組みに過ぎなくなった。ピラミッド型の管理体制は組織のスピードを鈍らせる元凶として問題点が明らかになり、ヒト・モノ・カネの効率的な配分を妨げる。日本で有数の技術者集団でありながら、需要を掘り起こし経営資源を集中するためのシステムが整っていないため、せっかくの技術力も十分に発揮できない。過去の成功体験が大きかっただけに、管理主義などの体質は組織に深く根を下ろし、巨大企業集団の再生の足枷になっている。

 それで、上のような状況を打破するためにこんなチャレンジをしていますよ、というのを具体的な事例を挙げて紹介していくというのがこの本の構成である。

 たとえば、庄山社長(当時)が始めた「コーポレートシニアスタッフ」という制度を取り上げている。社内で特に目覚ましい活躍をしているミドル層を選抜し、最大限の裁量を与えて新事業の開発をさせるというものである。「社内ベンチャー」というと分かりやすいだろうか。ちなみに選抜された中でナンバー1の成果を上げたのは、「ミューチップ」を手がけた井村亮氏である。井村氏といえば新入社員研修で全新入社員を前にして講演をしたのだが、恐ろしいほどのエネルギーに満ちあふれた中年親父でとても印象的だった。以前どこかで講演を聴いた元マイクロソフトの古川亨にそっくりであった。

 その他、成果主義への移行や、MOTへの注力、子会社政策の変化など、幅広く取り上げている。なかなか面白く読めた。全体的にポジティブな書き方をしていて、読み終えた後には、日立の未来は明るい! と思えるところもすばらしい :-p

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今日の井原. Since 2003.11.12 by Ihara
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