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2005年11月24日
DBWeb2005へ行ってきたよ (二日目) このエントリーを含むはてなブックマーク

 で、DBWeb2005の二日目。前日とは違って遅刻せずに会場へ。おれ偉い。二日目は情報検索関連のセッションが催されるため、聞き逃すわけにはいかない。

 DBWebは1セッション当たりの参加者がやたら少ない。全体で100人くらいしか参加者がいないところを、3つの部屋で平行にセッションを走らせているため。「情報検索セッション」など、部屋にはたったの10人しか居なかった。そのうち半分は座長と発表者なので純粋な聴講者は5人とかそれくらいである。全国大会ではなく査読付きのカンファレンスなのに。おもしろい発表もあったのに。普通こんなものなのかしら。

 二日間を通じてさまざまな発表を聞いたが、特に興味深かったのは、日本IBMの人による「IBMの知識マネジメント」と題した発表だった。IBMのナレッジマネジメント製品の解説……ではなく、IBM社内でどのようなナレッジマネジメントがなされているか、その概略を解説するという内容である。これは本当に面白かった。これを聞けただけで参加費5千円を払った価値があったというくらいだ。

 IBMには、90年代の初めごろ、経営が傾いた時期があった。この時期、状況を打破するために数々の試みが為されたのだが、その中の一つが全社的なナレッジマネジメントシステムを導入することだった。しかし、これは失敗に終わったという。

 それは何故か。まず、情報を共有するための動機付けが無かった。そのとき導入されたシステムとは、とにかくでかいデータベースとそこにアクセスするインタフェースを作って、「さあ、お前らの抱える知識を文書化してここにうpしろや!」というようなものだったらしいのだが、仕組みだけを作っても人は動かない。ナレッジマネジメントにはこういう目的と利点があるのでみなさんぜひ協力してくださいと説明すると、なるほど分かったと言ってはくれるのだが、それが行動に結びつかなかったとのこと。

 次に、社員たちが知識を文書化するための時間を思うように取れなかった。文書化のための時間が全く与えられなかったというわけではなかったのだが、 どうも文書化に掛かる時間をかなり過小に見積る傾向が強かったらしい。どういうことかというと、知識を……とりわけ会社組織の中で何となく共有されてきたような曖昧模糊とした知識を文書化するというのは、実は非常に大変な、手間の掛かる作業であり、たとえば書くべき内容をまとめたり、資料を集めたり、全体の構成を練ったりと、そういった下準備に大きな時間が掛かるものだ。

 しかし、このとき、管理者たちはそういったことを考えず、文章を書く時間だけを考えて作業時間を見積もることが多かった。「たった8000文字くらいの文章なら、1日あれば書けるでしょ。書いてね」などと言ったらしいが、それでは上手く行かなかった由。

 それで、このとき導入されたシステムは、導入当初こそ物珍しさからそれなりに使われたのだが、18ヶ月後にはアクセスが激減するという結果となってしまった。

 しかし、それで終わらなかったのがIBMの偉いところである。

 最初のシステムが失敗に終わった後、95年頃になって、IBM社内のコンサルティング部門が、独自にナレッジマネジメントシステムを導入し、運用を始めた。
 (こんがらがらないように、ここからは、 90年代始めに全社的に導入して失敗したのを「最初のシステム」、95年頃にコンサルティング部門が導入したのを「2番目のシステム」と呼び分けることにしよう。)
 この2番目のシステムについては、あまり発表の中で詳細な説明がなかったのだが、Webブラウザでアクセスし柔軟に情報の共有を行えるという、今で言うグループウェアに近いものだったそうで、まあとにかく最初のシステムとは違って上手くいった。

 それで、コンサルティング部門では、その成果をまとめ、我々が導入したナレッジマネジメントシステムによってこれだけの成果があったと、経営陣の前でプレゼンをした。それを聴いた経営陣は、なるほど、それならもう一度全社的なナレッジマネジメントシステムに取り組んでみようと考え、それまでの経験を活かした新たなシステムの導入が行われた。
 (この新たなシステムは「三番目のシステム」と呼ぼう)

 うー、ここからが肝心なところなのだが書くのが面倒になってきたな。以下は手短にまとめるよ。

 結論から言うと、そうして導入された三番目のシステムが現在IBMで使われているナレッジマネジメントシステムであり、これは概ね上手く運用されている。

 では、なぜ最初のシステムで失敗したものが、現在の三番目のシステムでは上手くいっているのか。 運用面とシステム面の2つに分けて述べる。まずは運用面である。

 第一に、ナレッジマネジメントへの貢献に対してインセンティブを与える仕組みを整えた。三番目のシステムには、知識へのアクセス数を把握し、人気のある(頻繁にアクセスされる)知識がどれか明らかにする仕組みや、知識を利用した社員に、利用後にその知識がどれくらい有用だったかを評価させる仕組みがある。そして、人気のある知識、有用と評価された知識をシステムに入力した社員にはインセンティブが与えられる。インセンティブってのは、要するに金銭的な報酬ね。

 また、部門ごとにノルマを課し、「貴方の部門は、今年度はこれだけの知識をシステムに入力して下さいね」ってのを義務づける。さらには、部門ごとにナレッジマネジメントの担当者を置き、啓蒙活動を行わせる。

 このインセンティブとノルマの両立をIBMの人は「飴と鞭」と表現していたがなるほどとおもう。

 他には、毎年キャッチフレーズを作って社内に広報するなど、ナレッジマネジメントへの関心を高める努力もしているらしい。 質を維持するための仕組みとしては、社員が文書化した知識をシステムのデータベースに登録する際に、担当者がチェックし、分かりにくい表現等の修正を求めているとのこと。

 次に、システム面である。

 システム面では、検索機能にもっとも力を入れているという印象である。IBMの人は、「検索機能がしょぼかったら、誰もシステムを使わないでしょう」と言っていたが、これはまさにその通りだ。検索機能は超重要。

 三番目のシステムはWebベースのシステムとなっており、Webブラウザを用いてアクセスする。トップページはポータルサイトのような作りになっており、キーワード検索とカテゴリ検索の2つの方法で検索が可能となっている。

 キーワード検索機能としては、基本的には、データベースに登録された知識に対して、キーワードを入力して全文検索を行うというものになっている。その際に、知識はジャンルごと(?)に複数のデータベースに分けて格納されてるのだが、検索するデータベースを指定したり、利用実績等によって絞り込みを行ったりと、多彩な検索オプションを使える。また、(日本IBMの中だけでなく)世界中のIBMグループのデータベースに対して検索が可能である。

 カテゴリ検索では、日本独自のカスタマイズをするなどしている。

 これらの検索機能は、学術的・技術的にはあまり目新しいものはないかと思うが、利用者のことを考えて丁寧に作り込まれているという印象である。

 講演全体として、組織としてナレッジマネジメントに取り組むとはどういうことなのかを知ることが出来て有意義だった。講演者の方に感謝したい。

 

 他にも面白い講演がいくつもあったが、詳しい内容は割愛する。書くのがめんどいし。Yahooの岡本真氏のプレゼン技術が圧倒的に素晴らしかったのが印象に残っている。NTTレゾナントの竹野浩氏は「MultiMedia Meister」の実装や運用について述べたがこれも非常に面白かった。

 また、研究発表では、中央大学の加藤俊一先生のグループが、3次元オブジェクトを「エレガント」「シック」等の印象語と結びつけるという研究について発表していた。尾内研究室でもメンバーの1人が近しいことをやっている(やっていた?)のでふうん、こんなのもあるのかと面白く聴いた次第。

 

 (で、ここからですます調で書くよ)全体として、DBWebはなかなか面白いイベントでした。特に、今回のDBWebでは、学会の主催するシンポジウムでありながら、オープンソース・コミュニティの人たちを招いたり、Googleやyahooの人たちを招いたりと、データベース+Webという枠の中で魅力的なプログラムを作ろうという意欲が見えて非常に良かったと思います。学会主催ということもあってお堅いイメージのシンポジウムですが、データベース技術や情報検索、Web周りの先端技術等に興味のある人ならおそらく楽しめると思います。ただ、なんせ平日の昼間に開催されるため、学生やニート、あるいは本職の研究者でないとなかなか参加するのは難しいかも知れませんが。

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今日の井原. Since 2003.11.12 by Ihara
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